2020/09/08
ご来院の際、お気づきの方も多いと思いますが、当院の玄関までのスロープの上につばめの巣があります。毎年つがいのつばめがやってきて、たくさんの赤ちゃんつばめたちが巣立っていきます。いつもの春の光景。最近は同じ巣を使っていることもあり、ほぼ巣作りすることなく、気づいたら親鳥が卵を温めているといった状況です。
今年は例年よりも少し遅い産卵でしたが、無事に赤ちゃんつばめたちが元気に巣立っていきました。つばめがくる時期になると、どうしても糞が落ちてしまうので、私たちスタッフもつばめたちの成長を見守りつつ、糞のお掃除をしています。
お盆休み前のある日、玄関先のお掃除をしてくれているスタッフが、また巣につばめがいることに気がつきました。今まで2回も産卵にくることがなかったので驚きましたが、調べてみると1シーズンに1、2回、多ければ3回産卵をするつばめもいるようです。通常は、産卵する度に巣を新しく作り替えることが多いようなのですが、今回のように短い期間で同じ巣を使っているということは、同じつがいのつばめである可能性が高いそうです。また当院にくるつばめは、『コシアカツバメ』という種類で北海道から九州にかけて幅広く生息している個体です。お腹に淡色の斑があり、名前の通り腰と眼の後ろの羽が赤褐色をしています。オス・メスともに寿命はおよそ7年で、そのうちの約2週間を卵として過ごし、幼鳥の期間は1年です。
通常つばめは越冬地の南の島から日本に渡ってきてから、4月頃に民家の軒下などに巣作りを始めます。早いと2、3日で作って、遅ければ1週間くらいかかることがあるそうです。巣作りの材料は、田んぼの泥や枯草などで集めてきた材料を唾液で固めて作ります。
産卵をするのは、4月~5月。1日に1個ずつ、合計で3~7個の卵を産みます。卵はメスが中心になって温め、2週間前後で孵化。ひなにはオスとメスが交代で餌を与えるのですが、親鳥たちは1日に500回も巣と餌場を往復するそうです。餌は主にハエ、ハチ、アブ、カメムシ、ユスリカなど飛んでいる虫が主食です。今回のように8月になると餌の種類が変わってくるのか、最近は糞とともに大量のバッタが落ちていて、バッタの死骸と格闘しながらお掃除しています。(みんな虫が嫌いなので、鳥だけに鳥肌立って掃除しています:笑)
たまに巣からひなが落ちているよと患者さまから教えていただくことがあるのですが、巣から転落する理由は事故の場合も多いようですが、なかにはオスの親鳥が他のオスとのペアリングで産んだひなを感じとり、自分の血を引かない個体を追い出す習性があると考えられています。また体が小さくて、強く育たない可能性のあるひなには餌を与えずに巣から落とすこともあるそうです。何度も餌場と巣を往復する献身的な子育てかと思いきや、意外とシビアな一面があることが分かりました。
このようにして、無事に巣立ちまで生き残ることができるひなはおよそ5割程度と言われています。また、巣立っても直後は餌が上手に取れないことも多く、巣立ってから1週間前後は親から餌をもらう個体もいます。当院のつばめたちも、丸々と成長してきたのでそろそろ巣立ちかと思います。つばめたちは秋になると暖かい南の国を目指して日本を後にしますが、親鳥たちは翌年の春になると昨年作った巣の近くで待ち合わせをし、再び産卵をするということです。
『つばめが巣を作る家は縁起が良い、幸せになれる』という昔からの言い伝えがあります。人の行き来があり、外敵から身を守れる場所に巣を作るそうですが、これからもたくさんの人が訪れる活気のある病院でありますよう、つばめたちには毎年来てもらいたいものですね。